» 形状記憶合金の特性
(1)形状記憶合金の原理
形状記憶合金の変形は一般の金属の塑性変形とは異なり、結晶構造の変化(変態)を伴う変形です。
変態は温度変化でも起こり、形状記憶現象は変形と温度変化による変態を利用したものです。(下図)
形状記憶効果
Ni-Ti合金は、形状回復温度より高温側でオーステナイト相という結晶構造をとります。これを冷却するとマルテンサイト相に変態します。この相は、外部からの力で簡単に変形させることができます。変形すると、結晶構造は変形マルテンサイト相に変わり、これを加熱すると構造がオーステナイト相にもどるためNi-Ti合金の形状も元の形に戻るのです。
超弾性効果
Ni-Ti合金は、形状回復温度より高い温度のオーステナイト相領域において、外力を加えると応力誘起マルテンサイト相に変態し、外力を取り除くと、直ちに元のオーステナイト相に戻ります。このためNi-Ti合金は、塑性変形せずに、ゴムのような弾力性が得られるのです
(2)変態点
Ms:冷却時のマルテンサイト変態開始温度
Mf:冷却時のマルテンサイト変態終了温度
As:加熱時のマルテンサイト相→オーステナイト相(母相)変態開始温度
Af:加熱時のマルテンサイト相→オーステナイト相(母相)変態終了温度
形状記憶処理は通常400℃~500℃で行い、Ms温度以下で変形後、
再びAf温度以上に加熱すると元の形状に 復帰します。
(3)形状回復温度
通常材(KIOKALLOY:Ni-Ti2元素系)の回復温度は約20℃から100℃で、
化学成分と加工率及び、形状記憶熱処理温度の相乗効果でコントロールできます。(図2)
より低い形状回復温度の要求に対応して、第三元素を添加し、回復温度を-80℃まで下げることに成功しました。(低温用(KIOKALLOY-S):Ni-Ti-Co3元素系(特許出願中))
(4)荷重-ひずみ曲線
引張試験により、荷重-ひずみ曲線を求めると、試験温度により、曲線がいちじるしく異なります。即ち、Mf点以下の温度で、あるひずみ量を与え、除苛すると大きなひずみは残りますが、
(このひずみ量はAf点以上に加熱すると0になります-形状記憶効果)Af点以上でひずみを与えた場合は除苛するとひずみは0に近づきます。(図3)
(5)特性値
機械的性質と形状回復温度
項 目
| NI-Ti合金
(KIOKALLOY) | Ni-Ti-Co合金
(KIOKALLOY-S) | Ni-Ti-Cu合金
(KIOKALLOY-T) | ||
形状回復温度(℃)
| 20~100
| -30~30
| 40~70
| ||
機械的性質
| マルテン
サイト相
| 引張り強さMPa
(Kg.f/mm2 )
| 1175~1370
(120~140) | 1370~1570
(140~160) | 1175~1765
(120~180) |
降伏強さ(耐力)
MPa(Kg.f/mm2)
| ~196
(~20) | ~294
(~30) | 68~98
(7~10) | ||
伸び%
| ~50
| ~50
| ~20
| ||
横弾性係数Mpa
(Kg.f/mm2)
| 7845~9800
(800~1000) | 9800~13730
(1000~1400) | 0~4900
(0~500) | ||
オーステ
ナイト相(母相)
| 引張り強さMPa
(Kg.f/mm2 )
| 1075~1175
(110~120) | 1275~1370
(130~140) | 1175~1765
(120~180) | |
降伏強さ(耐力)
MPa(Kg.f/mm2 )
| 390~785
(40~80) | 490~980
(50~100) | 390~785
(40~80) | ||
伸び%
| ~20
| ~20
| ~20
| ||
横弾性係数Mpa
(Kg.f/mm2)
| 17650~21575
(1800~2200) | 25500~28440
(2600~2900) | 19615~27460 (2000~2800) |
機械的性質は及び形状回復温度は加工条件、熱処理条件、使用温度により変わります。
(6)普通の金属材料と形状記憶合金の応力-歪曲線
引張試験により、荷重-ひずみ曲線を求めると、試験温度により、曲線がいちじるしく異なります。
即ち、Mf点以下の温度で、あるひずみ量を与え、除苛すると大きなひずみは残りますが、
(このひずみ量はAf点以上に加熱すると0になります-形状記憶効果)
Af点以上でひずみを与えた場合は除苛するとひずみは0に近づきます。(図3)